海外に居住している人が国民年金に任意加入する場合は、原則として、日本にいる親族に代行を依頼します。代行できる親族がいない場合は、日本国内における最後の住所地を管轄する社会保険事務所に申し込みます。国内に住所を有したことがない場合は、千代田社会保険事務所(03-3265-4381) が窓口となります。
年金には老齢年金、障害年金、遺族年金の3つのタイプがありますが、ここでは老齢年金のみについて解説します。国民年金から給付される老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金から給付される老齢年金を「老齢厚生年金」、共済組合から給付されるものを「退職共済年金」と呼びます。「老齢厚生年金」と「退職共済年金」は扱いがほとんど同じですので、ここでは主として「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」について話を進めます。
職業等に応じて3つに分かれます。自営業者や学生は、第1号被保険者と呼ばれ、国民年金のみに加入します。保険料は自ら納めなくてはなりません。民間サラリーマンや公務員は、第2号被保険者と呼ばれ、民間サラリーマンは、国民年金と厚生年金、公務員は、国民年金と共済年金の両方に加入します。保険料はすべて給料から天引きされます。第2号被保険者の被扶養配偶者、つまり、専業主婦等は、第3号被保険者と呼ばれます。第3号被保険者は、国民年金のみに加入しますが、保険料は、厚生年金または共済組合のどちらかが負担する仕組みになっていますので、自ら納めることはありません。
H.20年度の国民年金の保険料は、月額14,410円です。保険料は、H.29年度まで、毎年度、H.16年度の価格で280円に相当する金額だけ引き上げられ、それ以降は、H.16年度の価格で16,900円に相当する金額に固定されることになっています。なお、納付を奨励するための割引制度や、納付が困難な人のために、納付免除制度等も設けられています。
厚生年金の保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けた金額になります。この金額を労使が折半します。標準報酬月額というのは、30等級に分かれた、基準となる報酬月額のことで、保険料や年金を算出する時に使われます。例えば、H.20年7月の実際の報酬が255,600円であれば、それは第16等級に該当し、26万円として計算されます。保険料率はH.20年7月現在14.996%ですが、毎年9月に0.354%ずつ引き上げられ、最終的に18.3%で固定されます。なお、ボーナスについても、同じ計算方法で算出される金額を保険料として払わなければなりません。
年金または共済組合のどちらかが負担する仕組みになっていますので、自ら納めることはありません。
「受給資格期間」(原則として25年) を満たすことが必要です。「受給資格期間」には、国民年金の保険料を納付した期間、保険料の納付を免除された期間、および「合算対象期間」が含まれます。「合算対象期間」とは「カラ期間」とも呼ばれ、「受給資格期間」に合算されるものの、年金額の計算の対象にはならない期間のことをいいます。S.36年4月以降海外に住んでいた20歳から60歳までの期間はこの「合算対象期間」に含まれます。また、S.36年4月からS.61年までの間のサラリーマンの妻であった20歳から60歳までの期間などもこれに当たります。なお、次のような人を対象に「受給資格期間」の短縮経過措置が設けられています。
■対象者:S.31年4月1日以前に生まれた人で、厚生年金や共済組合の
加入期間が20年以上ある人
生年月日 |
受給資格期間 |
| |
S. 27.04.01 |
20年 |
| S. 27.04.02〜 |
S. 28.04.01 |
21年 |
| S. 28.04.02 |
S. 29.04.01 |
22年 |
| S. 29.04.02 |
S. 30.04.01 |
23年 |
| S. 30.04.02 |
S. 31.04.01 |
24年 |
■対象者:40歳以後(女子は35歳以後)の厚生年金の加入期間が
15年以上ある人
生年月日 |
受給資格期間 |
| |
S. 22.04.01 |
15年 |
| S. 22.04.02〜 |
S. 23.04.01 |
16年 |
| S. 23.04.02〜 |
S. 24.04.01 |
17年 |
| S. 24.04.02〜 |
S. 25.04.01 |
18年 |
| S. 25.04.02〜 |
S. 26.04.01 |
19年 |
■対象者:S.5年4月1日以前に生まれた人
生年月日 |
受給資格期間 |
| T.15.04.02〜 |
S. 2.04.01 |
21年 |
| S. 2.04.02〜 |
S. 3.04.01 |
22年 |
| S. 3.04.02〜 |
S. 4.04.01 |
23年 |
| S. 4.04.02〜 |
S. 5.04.01 |
24年 |
| |
|
|
H.19年度の年金額は次のように計算されます (保険料免除期間がない場合)。
792,100円×保険料納付月数÷(加入可能年数×12)「加入可能年数」はT.15年4月2日からS.2年4月1日に生まれた人は25年で、それ以後1年ずつ増えてゆき、S.16年4月2日以降に生まれた人はすべて40年となります。ですから、仮にS.20年生まれの人が日本で10年だけ国民年金に加入し、以後カナダに移住したとすれば、満額の1/4が支給されることになります。
792,100円という額は、H.12年の基礎年金額である804,200円にH.14年の物価指数-0.9%、H.15年の物価指数-0.3%、H.16年の物価指数0%、H.17年の物価指数-0.3%、H.18年度の名目手取り賃金変動率0.0%、それにH.19年度の物価指数0.0%を反映させたものです。(H.19 年度から、名目手取り賃金変動率または物価変動率を基準に年金額を改定することになっています。) 数式では804,200x(1-0.009-0.003-0.003)≒792,100となります。
実はこの金額は法定額とは異なります。年金の法定額は、H.6年の改正で、780,900円x改定率と定められました。
改定率は毎年、名目手取り賃金変動率または、物価変動率を基準に決められます。780,900円というのは、年金額に反映されなかったH.11年からH.13年までの物価指数の減少 (合計で-1.7%) も反映させた、H.16年度の本来支給されるべき基礎年金額です。(H.12年度からH.14年度までの3年間は前年の物価指数がマイナスであったのに、年金額はそのまま据え置かれた経緯があります。) H.20年度の改定率は0.997ですので、H.20年度の法定額は778,600円です。しかし、1.7%のマイナス分は、物価上昇が続く中で解消されるようにするため、「物価スライド特例措置」が設けられ、法定額の方が従来の計算による金額より少ない場合は、後者を年金額とすることになっています。
H.16年の改正には、もう一つの大きな変更が盛り込まれています。それは、少子高齢化社会においても、将来的に年金制度を確保するため、「調整期間」を設け、その期間中は、賃金・物価が上昇しても、それをそのまま年金に反映させず、「調整率」を掛けて減額したものを支給するということです。
「調整率」は被保険者の総数の減少率と平均余命の伸び率を基準とするため、マクロ経済スライドによる調整と呼ばれます。
具体的には-0.9%程度と考えられますので、将来、賃金・物価が仮に1%上がったとしても、実際に年金に反映されるのは0.1%ということになります。
ただし、賃金・物価がマイナスの場合は調整されませんし、プラスでも0.9未満であれば、年金額がマイナスにならない範囲で調整されます。
なお、実施されるのは「物価スライド特例措置」で1.7%のマイナスが解消されてからになります。そして、年金額が現役世代の賃金の約50%になるまで、この「調整期間」が続くと考えられています。
老齢基礎年金は原則として65歳から支給されますが、60歳から64歳までに支給を開始する「繰上げ支給」や66歳以降70歳までに開始する「繰り下げ支給」を請求することもできます。支給額はそれぞれ次のように減額、増額されます。
[S.16年4月1日以前に生まれた人]
60歳 - 58%
61歳 - 65%
62歳 - 72%
63歳 - 80%
64歳 - 89%
66歳 - 112%
67歳 - 126%
68歳 - 143%
69歳 - 164%
70歳 - 188%
[S.16年4月2日以降に生まれた人]
繰上げの場合は1ヶ月につき0.5%減り、繰下げの場合は1ヶ月につき0.7%増額されます。仮に60歳からの支給を請求すると5年×12ヶ月×0.5%=30%減額されます。そして、この減額された年金が生涯続くことになります。
もちろん、その人がどれだけ長生きするかによるわけですが、単純計算すれば、S.16年4月2日以降に生まれた人が60歳から支給を受けると、76歳8ヶ月で繰り上げしなかった人に追い付かれます。60歳の人の平均余命は、男性約22年2ヶ月、女性約27年9ヶ月(H.16年)ですから、男性の場合、平均して5年6ヶ月、女性の場合は、約11年1ヶ月の間、低い年金に甘んじなければならないことになります。
また、金額の減額だけでなく、寡婦年金や障害基礎年金が受給できない、さらに、配偶者が死亡した時遺族厚生年金と併給できないというような不利な面もありますので、繰上げは慎重に決断する必要があります。
老齢基礎年金の受給資格があり、かつ、厚生年金に1ヶ月以上加入していた人。ただし、65歳未満に支給される老齢厚生年金を受給するには1年以上加入することが必要。
老齢厚生年金は元来60歳から支給されていましたが、支給年齢が段階的に引き上げられ、最終的には65歳からの支給になります。65歳までに支給される老齢厚生年金のことを正式には「特別支給の老齢厚生年金」と呼びます。
この年金は「報酬比例部分」、「定額部分」、「加給年金」の三つの部分からなりますが、まず、「定額部分」について、男性の場合、次のように支給年齢が引き上げられます。
生年月日 |
支給開始年齢 |
| S. 16.04.02〜 |
S. 18.04.01 |
61歳 |
| S. 18.04.02〜 |
S.20.04.01 |
62歳 |
| S. 20.04.02〜 |
S. 22.04.01 |
63歳 |
| S. 22.04.02〜 |
S. 24.04.01 |
64歳 |
| S. 24.04.02〜 |
|
65歳 |
女性の場合はこれより5年遅れて引き上げが始まります。この「定額部分」は65歳以降は「老齢基礎年金」となります。「加給年金」の支給開始年齢は「定額部分」と同じです。
「報酬比例部分」は「定額部分」より12年遅れて年齢引き上げが始まります。最終的に、男子はS.36年4月2日、女子はS.41年4月2日以降に生まれた人はすべて65歳からの支給になります。そして65歳以後支給される「報酬比例部分」のことを「老齢厚生年金」と呼びます。
1.「報酬比例部分」
H.12年の改正、H.15年から導入された「総報酬制」、更には、H.16年の改正で、計算方法はかなり複雑なものとなっています。しかし、H.12年の改正後の年金額が改正前の年金額を下回る場合は、改正前の金額を受給できるという「従前額の保証」が設けられていますので、ここでは改正前の計算を説明します。また、H.5年以降の「総報酬制」に該当する人も、カナダではごく少数ですので、それにもここでは触れません。
年金額は次の計算式で算出されます。
「平均標準報酬月額」×給付乗率/1000×加入月数×1.031×物価スライド率
「平均標準報酬月額」というのは、「標準報酬月額」(【D.保険料】参照)を加入期間にわたって平均したものですが、昔の「標準報酬月額」をそのまま使ったのでは不合理なことになってしまいます。そこで、貨幣価値を調整するため、過去のすべての「標準報酬月額」に、「再評価率」というものを掛けて現在の価格に読み替えます。
その上で平均したものが、「平均標準報酬月額」です。給付乗率は、S.2年4月1日以前に生まれた人は10、それ以降逓減し、S.21年4月2日以降に生まれた人はすべて7.5となります。物価スライド率はH.20年度は0.985です。
2.「定額部分」
次の計算式で算出されます。
1,676円×定額部分乗率×加入月数×物価
スライド率
乗率はS.21年4月2日以降生まれの人は1です。S.21年4月1日以前S.2年4月2日以降生まれの人については1.032から1.817まで年ごとに上がっていきます。S.2年4月1日以前生まれの人は1.875です。加入月数には次の上限があります。
生年月日 |
上限 |
| |
S. 4.04.01 |
420 |
| S. 4.04.02〜 |
S. 9.04.01 |
432 |
| S. 9.04.02〜 |
S. 19.04.01 |
444 |
| S. 20.04.02〜 |
S. 21.04.01 |
468 |
| S. 21.04.02〜 |
|
480 |
この「定額部分」は65歳からの「老齢基礎年金」に相当するものですが、「老齢基礎年金」の金額の方が少ない場合は、差額を「経過的加算」として65歳から支給されます。
3.「加給年金」
年金の扶養手当といえるようなもので、「厚生年金」に原則20年以上加入していた人に支給されます。配偶者及び子供にはそれぞれ年齢や収入額等の制限があります。
H.20年度の金額は、配偶者が227.900円+配偶者特別加算、第二子までが227,900円、第三子以降が75,900円です。H.20年度の「配偶者特別加算」の金額は次の通りです。
生年月日 |
金額 |
| S. 9.04.01〜 |
S. 15.04.01 |
33,600 |
| S. 15.04.02〜 |
S. 16.04.01 |
67,300 |
| S. 16.04.02〜 |
S. 17.04.01 |
101,000 |
| S. 17.04.02〜 |
S. 18.04.01 |
134,600 |
| S. 18.04.01〜 |
|
168,100 |
なお、「加給年金」は配偶者が65歳になると、「振替加算」として配偶者の「老齢基礎年金」に上乗せして支給されるようになります。その金額はH.20年度では227,900円を最高に、生年月日に応じて逓減し、S.41年4月2日以降生まれからはゼロになります。
S.16年4月2日からS.24年4月1日までに生まれた男性 (女性の場合はS.21.4.2~ S.29.4.1)は「定額部分」の支給開始年齢が段階的に引き上げられるので、その不利を緩和するため、「老齢基礎年金」の一部繰上げを選択することもできます。
その場合、「定額部分」は「繰上調整額」という名称で支給され、計算式は、Aを繰上げ請求月から特別支給開始月までの月数、Bを繰上げ請求月から65歳になるまでの月数とした時、「定額部分」×(1−A/B) となります。
また、基礎年金としては「老齢基礎年金」×A/B×(1−0.005×B)で求められる減額された「一部繰上げの老齢基礎年金」が生涯支給され、それに加えて65歳からは「老齢基礎年金」×(1−A/B)で求められる金額が「老齢基礎年金加算額」として加算されます。この制度では、繰上げによる減額率は、「老齢基礎年金」のある部分のみに適用されることになりますので、一般的には、全部繰上げより有利になります。
ただし、厚生年金の加入期間が比較的短かく、「定額部分」の少ない人の場合は、必ずしも有利とはいえません。
年金を受け取るためには自ら必要な手続きを取らなくてはなりません。それを「裁定請求」といいます。
「裁定請求」は受給資格年齢に達した段階で行いますが、必要書類の確認や準備に時間を要しますので、前もって、かつての勤務先を管轄する社会保険事務所、最終居住地を管轄する社会保険事務所、あるいは所属していた共済組合等に問い合わせ、確認を取ることをお勧めします。
なお、年金は5年間請求しないと時効になってしまいます。
年金に関するホームページ
社会保険庁:www.sia.go.jp
厚生労働省:www.mhlw.go.jp
公立学校共済組合:www.kouritu.go.jp
私学共済組合:www.shigaku.go.jp
(文責:Electro-Media Pacific)